はじめに
野田商店さんのことは以前から存じていました。全国のあらゆるデパートの催事で、着分毛糸をお手頃価格で購入できるお店。
工業糸の存在も存じていました。工場で使うには少し分量の足りない毛糸。
そしてどちらも質が高いとも聞いていました。
でも、靴下とモチーフ編みがメインのわたしには縁のない存在だとも思っていました。
実際、2021年か2022年くらいに、野田商店さんの催事に行っても何も買わなかったし。
しかし、そんなわたしを根本から揺るがす転機が訪れました。今回は野田商店さん・工業糸沼に入っていったきっかけをご紹介します。
経緯
その1: 働くセーターが気になった
働くセーターのことをチラチラ気にしながら生活していました。前後裏表、好きに回して着られるセーターで、形がきれいでそして動きやすく、様々なサイズがあるということを知りました。
編んでみたい。
まず、コンセプトがいい。大切に着なくても大丈夫で、動きやすいセーターなのがいい。
そしてトップダウンのラグランセーターで、とじはぎがないのもいい。
更に、わたしは背が高い、かつ身長の割に腕が長いのもあり、サイズが選べるのがいい。
ただ、わたしは繊維に対して肌が反応してしまうタイプで(荒れたりはしないんだけど、なんかずっと気になり続ける)、指定のJamison’sを首回りに持ってくるとチクチクしてしまうのではないかという懸念がありました。
また、そもそも上半身が分厚い骨格ストレートで、襟がつまったセーターやラグラン袖が苦手。太って見えるので避けてきました。
ということで、憧れはありつつも、本だけ購入してずっと持ち続けていました。
素敵なセーターだなぁと思いながらも。
その2: 友人に毛糸をいただく

仕事柄毛糸とかかわりがある友人から、素敵な毛糸をいただきました。
白い毛糸が玉巻きで5個。手触りがよく、買ったら結構な値段がするんじゃないかなというくらい良い糸です。組成はわからないけど、少なくとも獣毛100%ではありそう。
早速これで何かを編みたいと思ったのですが、懸念がありました。うち、誰も白が似合わない。全員、薄い色は軒並みアウトなタイプ。なんか顔が赤黒くなる。
そしてそれをくれた子に何かを編みたいとも思ったのですが、その子も真っ白というイメージはない。でもわたしの家の面々より白の耐性は高そう。
ということで、その子にいただいた毛糸+何らかの添え糸をして、2本取りくらいで何か編めないだろうかと考え始めました。
その3: 細い糸が気になり始める
靴下を本格的に編み始めるまでは、400m/100gの中細毛糸って細すぎでは? と思っていました。これで衣服など編んでいたら一生編み終わらなさそうだとも。
そんな中、Gavstrik Shawlを2枚編み終えます。
これって、基本的にはIsagerのAlpaca1(800m/100g)とSpinni(600m/100g)の2本取りで編むのですが、2本合わせると350m/100gくらいの換算になると思われ、「ソックヤーンと同じくらいの太さの糸で、これだけでかいものを編んだ」という謎の達成感に襲われました。
そこで、「ウエアってでかいけど今ならいける! 行くしかない!」という謎の使命感に駆られます。
その4: どうやら編むの早い&メリヤス砂漠耐性があるらしい
編み会や毛糸屋さんなどに行くと、他の方が編んでいるものを見たり、見られたりが発生しますが、そのときに高確率で「編むの早いね!?」と言われてきました。
いや早いのは表編みだけですよ、裏編みとか遅いしとじはぎできないですよ? 的なことを思ってました。
でもよくよく話を聞いていると、「そもそも連続してメリヤス編みを続けられない」「編む途中で模様や色替えなど、何かしらイベントごとがないと飽きてしまう」という方が相当数いらっしゃることがわかりました。
わたしの認識としては、編み物をしながらゲームしたり動画を見たりしているので、その間あまり複雑なことはできないということと、職業がガチ頭脳労働のため、労働で疲れた頭を趣味でもブン回すことは現実的でないというくらいでした。だからメリヤス編みが連続しても苦ではないし、瞑想の一種だと思っているし、むしろ靴下編みでも、つま先とかかととゴム編み止めは疲れてないときにやらないと間違えてしまうので、心してかかる箇所でもありました。
でも、メリヤス砂漠が苦手という方で、「靴下の模様なしの部分を編むのが苦痛」とまでおっしゃる方がいて、もしかして砂漠耐性って一種才能なのではないかと考えはじめました。大層思い上がっている。
さて、更にいろんな人に話を聞いていると、棒針編みをする人は、突き詰めてくると下記の通りに分けられるのではないかという仮説ができました。
- 色遊び: フェアアイルやラトビアミトンをはじめとする編み込み模様、いろんな色の余り毛糸をセンスよく組み合わせて1つの作品を作る人。
- 糸遊び・形遊び: 個性的な糸を使う、個性的な形を作る人。意外なことに、地模様は入っていても一部だけで、それ以外はメリヤス編みなどのパターンが多い。
- 透かし編み・レース: 透かし編みの技法を使う人。シェットランドレース編みなど(この界隈詳しくないので、詳しい方教えてください)
- 地模様: アラン・ガンジー・イギリスゴム編みなど。立体感を楽しむ人。
わたしはずっと1の「色遊び」派だと思ってきました。靴下の色合わせも楽しいし、編み込み好きだし編み込みのニットキャップも編んできたし。フェアアイルをやってみたいとずっと思い続けている。
でも最近になって、「カラフルすぎるものも色が明るすぎるものも似合わないし、オーバーサイズは太って見えるけど、シンプルすぎるものを着てると途端に地味に見えてあまり似合ってない」ということに気付きはじめました。なんか、背が高いので物理的な威圧感はあるはずなのに、大人しい恰好をしていると途端にナメて見られるんですよね。
ということで、形も色も盛れないのであれば素材とニュアンスで盛るしかない、ひいては2の「糸遊び」に寄せていくのもありなんじゃないかと思い始めました。せっかく永遠にメリヤス編みができるのだから。
経緯総括
- 働くセーターが編みたい
- 友人に貰った毛糸に添え糸をして何か編みたい
- 細糸でショールを編み終えた今であれば、服なんかの大物も作れる気がする
- メリヤス編みバッチ来い
かくして、「友人に貰った毛糸に添え糸をして、友人の働くセーターを編もう、そのために添え糸となる細い毛糸を買いに行こう」になったわけです。
野田商店さんの催事に行った
新宿オカダヤ(移転前)に行くなどして色々と考えましたが、しっくりくるものがなかったので、新宿高島屋の野田商店さんの催事に行きました。
これが、多分今までで一番混んでいたと思われる、2025年2月の新宿高島屋の催事です。このとき、初日にもかかわらずものすごいスピードで毛糸がなくなり、わたしが色々吟味してから購入し、さて帰ろうという段階で、品出しする毛糸が本当に少なくなっていました。若い子もたくさんいて、編み物ブームを強く感じましたね。
2025年6月の新宿高島屋、2025年8月の日本橋高島屋の催事では落ち着いて見られたので、多分2025年2月がピークだったのではないでしょうか。
それはさておき、野田商店さんの毛糸第1段(2025年2月の新宿高島屋)ドン。
左上からモスグリーン、コーン糸、左下がチャコールグレー、べージュの芯糸に黒のモヘア。
このコーン糸を友人のセーターの添え糸に使うことにしました。

第2段(2025年6月の新宿高島屋)ドン。
左が黒、右上がチャコールグレー、右下がダークブラウン。

特に第2段、びっくりするほど黒いですね。添え糸ありであれば黒でも(目のチカチカっぷり的に)いけることを学んだという結果です。
工業糸のお店に行った
EYLULさん(大阪・阿部野)

Knitting Birdさんの「一期一会 靴下専用糸」を3巻購入。
これらを購入したのは↑のくだりよりもっと前の話なので、「噂の一期一会糸がある!」というまっさらなノリで購入しました。色味がとても偏っている。
これの一番左で編んだ靴下は下記です。
ITORICOTさん(浅草橋)

左がブルーフォックス・ウール・ナイロンの混紡で、チャコールグレーとブラウンの2本撚り。約2611m/350gで、太さは1/7.46。
右がウール(ジーロンラム)でブラックとベージュの2本撚り、約750m/100g、2/15。
繊維に疎すぎて、ブルーフォックスというのがすごそうだということだけはわかったのですが、何がどのようにすごいかは未だに理解できてないです。このブルーフォックスでは野田商店さんの糸と2本取りでセーターを編みました。洗いをかけたらすっごい起毛した。その話もいずれ書きます。
Knitting Bird東京店さん(南青山)
このお店には、既に2着のセーターを編み終えた状態で行ったので、工業糸ってこんな感じなんだなっていうのがなんとなく理解できた状態で行けました。

- 左から2本目まで: 一期一会糸
- 中央: 新あたかも(小粋)ブロンズ
- 右2本: あまねく(深緑色、何番だろう)
です。
おわりに
ということで、まんまとウエア沼にはまりました。友人のセーターも、その後に作った自分用のセーターも既にできてます。今3着目を検討中です。沼恐ろしい。
ということで、近々記録上げます。
最後までご覧いただきありがとうございました。
コメント